新潟県中魚沼郡津南町で母豚のアニマルウェルフェア飼養に取り組む方がいると知り、知人を通して紹介していただいたところ、快くお話を伺う機会をいただきました。
しかし、コロナウイルス感染症の流行があり、一旦、延期。新潟での感染状況が落ちついたことから、6月28日(日)に参加者6名で地元津南町の「蔵カフェ」でスライドを見ながらの勉強会が叶いました。
鬼や福ふくさんで飼育されている母豚たち
お話を伺ったのは(株)鬼や福ふくの島田福徳(よしのり)さんです。
会社経営で、種豚、子豚の繁殖、肉用豚となる肥育豚の一環経営を行っています。養豚の他に「魚沼米」の水稲と、「鬼もろこし」というブランド名のとうもろこしを生産しています。
「鬼もろこし」は天空の農業と言われる寒暖差のある津南高原で豚の堆肥を利用して生産されています。
粒が大きくて甘味が強くて絶品ですが、単に美味しいだけでなく、いち早く機械化による省力化を計り、豚のふんを堆肥化して利用する循環型農業です。
過酷な労働としての農業ではなく、「ゆとりのある農業」を目指しながらも、その結果得られる生産物が高価値を生み出しているのは、後述の養豚にも同じ理念を感じました。つまり、省力化・機械化により人がゆとりを持つことと、家畜の福祉向上が同じ線上にあるということです。
さて、前置きが長くなりましたが、日本ではほとんどの母豚が「妊娠ストール」という狭い金属の囲いの中で飼養されています。
後ろを振り向くこともできない環境で24時間過ごし、子豚を産み、育てることが、日本では一般的だというのです。海外では、この方法はアニマルウェルフェアに反するということで、徐々に廃止の方向に進んでいます。
*日本では一般的な母豚のストール飼育
(株)鬼や福ふくでは、2008年に豚舎の建て替えを行う際に、できるだけ豚にストレスをかけない方法に取り組みたいと考えて、当時、まだ日本国内では使用例がなかったオランダのネダップ社の「VELOS(べロス)」というシステムを取り入れることを決めました。
これは、豚にICタグをつけることにより、コンピューターで個体ごとに管理するシステムです。島田さんはオランダの農場の視察をおこない導入を決めたそうです。
種付けから1週間前後ストール飼育をしたのちは、母豚たちはフリースペースで自由に好きな場所で過ごします。
*鬼や福ふくでは母豚は自由に過ごしています
1頭当たり2㎡の面積があり、餌を食べたくなると給餌装置に自ら向かいます。1頭が装置に入ると入り口がロックされて他の豚は入れなくなります。時間が来るとロックが解除される仕組みで、給餌量がパソコン上にデータで送られて、豚の健康状態が管理されます。
また、隔離されたオス豚の匂いを嗅ぐことができる穴があり、訪れた回数から妊娠していなかった母豚の兆候を感知して、発情している母豚には自動的にスプレーが噴射されてインクでマーキングされ、次に給餌装置に入ったときに、種付けのためのセパレーションルームへと誘導される仕組みです。
*好きな場所で気の合う仲間とゴロン♬
全てを手作業で行っていた時は給餌も、発情の確認も、多くの時間が割かれていましたが、このシステムを取り入れてからは、コンピューターで管理できるようになり、その分、豚を観察することに時間が取れるようになったそうです。
また、フリーストールに変えた大きな変化は、難産が減ったことです。母豚が自由に歩きまわって足腰が強く健康になり、薬に頼ることが格段に減り、分娩が明らかに軽くなったそうです。他にも、寒い津南で健康に子豚を育てるために床暖房を設置したり、これからも、新しいことを取り入れていきたいとおっしゃっていました。
今は170頭の母豚ですが、将来的には350頭を目ざしているそうです。
*元気に育つ子豚ちゃん
島田さんがこのシステムを導入した時は、10年後には多くの養豚農家で同じようにフリーストールを導入して、自分の取り組みが珍しくなくなると思っていたら、いまだに普及していないのは意外だとおっしゃっていました。
市場での価値はどうなっているのか質問したところ、現在は他の豚と同じように出荷、屠畜されており、つまり、飼育法の違いは市場に反映されておらず、私たち消費者も選択することはできないそうです。
アニマルウェルフェアに配慮された豚肉を選択しようと思う消費者にとって残念なことだと思っていたら、近く、伊勢丹の新潟ブランド「越品」としてレストランで提供されることが決まったとの朗報を伺いました。
10月2日(金)見学会メンバーで、新潟市内のイタリアンレストランSPSギフトさんで島田さんを囲んで、島田さんの豚肉をメインディッシュに食事会を行いました。生産者さんと顔の見える関係で、大切に育てられたお肉をいただく貴重な機会となりました。
「鬼もろこし」のように、島田さんの豚がブランド化される日も近いかもしれません。
*SPSギフトさんから豚肉についてのレクチャーもいただきました
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